ハーバードMBAに見るエントリーシートの本質 | 面白いほど就職活動がわかるBlog -an easy guide to job hunting-

ハーバードMBAに見るエントリーシートの本質

ちなみに私はMBAは持ってませんが、友人・知人では、TOPスクールのホルダーがけっこういます。日本の大学とは次元の違う猛勉強と、同時にとにかく楽しい素敵なキャンパスライフを送れるそうで、話を聞くたびに、行っておけば良かったかなという気もします(そんな簡単に行けるもんじゃありませんが)。


このMBAの最高峰と言えば、ランキングは色々ありますが、やはり結局、誰しもがNo.1と認めるのは、HBSことハーバードビジネススクールでしょう。


先日、ネットサーフィンをしていたら、偶然、このHBSに留学されている方(小説家顔負けの文章力に、すさまじいキャリアで、天は何物与えるんだって驚き編ました・・・!)のBlogを発見して「HBS、MBAはこういうところなんだなぁ」ととても興味深く読んでいました。

すつと、その中で、一箇所、非常に衝撃を受けた記述がありました。


引用させて頂きます(青字部分)。


今回のミスはつまるところ、「何を伝えたいか」ということが自分のなかでごちゃ混ぜになってしまっていたことに起因している。「トップレベル会談がどのように進むのか、生々しい話を書きたい」という、legitimateな理由から、「俺ってすごいでしょ、こんな経験までしてるんだぜ」という虚栄心、ややgossip-yな話を書いてやろうというスケベ心まで、様々な気持ちが入り混じって、書かなくてもいいことまで書いてしまっていたのだ。それぞれについて伝えたいことは、別の書き方、別の表現手段で伝えればよいのだ。



これは僕だけでなく、多くの人が犯す過ちだと思う。書き始める30分前、ちょうど東京から電話してきた後輩に、HBSのエッセーを読んであげて、同じような内容を諭したところだった。強み・弱みを聞いている問題は、自分がどれだけすごいかをアピールする場所ではない。それはaccomplishmentを問う問題で書けばいいんだよ。この問題ではむしろ、強みと同じだけの分量を使って弱み、本当の弱みを書くべき。何千通ものエッセーを読む側からしたら、君という個性的な一人の人間の素顔が浮かび上がってくるような文章を読みたいんだ。この「私の短所は、完璧主義すぎることです」というのはもっとも安っぽい書き方だから、避けたほうがいい。自分の弱みをきちんと認識して、人に認めることができるmaturityと、弱みも持った人間くさい一人の受験生の顔が浮かび上がってくるようなエッセーを書きなさい。次の問い、「あなたにとって成功とは?」もまたしかり。ここで学生時代に立ち上げた団体がどれだけ成功しているかをアピールしてはダメ。それは違うところでで書けばいい。推薦状もあるし。ここでは、君が怪我をして入院してたあいだに悩んだこと考えたこと、自分なりの価値観や哲学を伝えるべき。「俺ってすごいでしょ」と書きたくなるところだけれど、伝えたい様々なメッセージをconfuseしちゃだめだ。それに、伝えるための様々な手段(この場合は各設問と推薦状)があることも忘れないで。そんなことを知った顔で言ったばかりだったのに。



TOP MBAというのは、日本人の場合は、まあ、だいたいが外資系投資銀行、戦略コンサル、総合商社、都銀、一流メーカーから来る人々で締められています。これらの有名企業に入って、数年間、仕事で高い実績を上げて、その上でTOEFLとGMATという試験で上位数%に入る、すさまじいハイスコアを取る必要があります。さらに、就職のエントリーシートのように、自分の実績、哲学、価値観、キャリア、ゴール、WHY MBA、WHY THIS SCHOOL等について大量のエッセイを書かなくてはならないそうです(もちろん英語で)。加えて、上司やクライアントからの推薦状も必要です。ここまで揃えても、まだ競争率は10倍近いそうです。


整理して見ると、TOPスクールには受かるには、

①基本的には有名企業に入れた人(例外もある)
②その中で仕事で高い実績を残せた人
③その中でTOEFL,GMATでトップレベルのスコアを出せた人
④その中でしっかりしたエッセイ、推薦状を準備できた人
⑤その中でさらに絞られて10人に1人

こういう競争です。


ここで僕が衝撃的だったのは、筆者の主張である「ついあれもこれも言いたいとなって、メッセージを混同してはいけない」ということ以上に、これだけのハイレベルな競争のシーンでも、④のエッセイを書く際には、「何千通ものエッセーを読む側からしたら、君という個性的な一人の人間の素顔が浮かび上がってくるような文章を読みたい」という状況であるということです。

けっして「俺ってすごいでしょ?」合戦だけで勝負をするわけじゃないんですね。


例えば、記事の中にある成功について、「君が怪我をして入院してたあいだに悩んだこと考えたこと、自分なりの価値観や哲学を伝えるべき」だそうです。

本当に地に足をつけて自分の率直な考察を述べることが大事なんですね。驚きません?


翻ってみて、皆さんの就職活動はどうでしょうか?MBA選考プロセスに比べれば、上の①~⑤で言う①付近のフェーズでしょう。


そんな場所で、「とにかく自分はすごいんだ!」ということを書かなくてはとあせって、意味不明のチープな活動と、無理矢理、まとめたフレーズを並べ立ててやいやしませんか?


だいたい学生時代の実績として語れるものなど、かなりオフィシャルな場を除けば無いに等しいと思います。


・部活でみんなの意見に耳をかたむけてリーダーシップを発揮した
・得意の企画力でサークルをゼロから立ち上げた
・行動力を発揮してバイトで売上を増やした
・幅広い世界を知るために留学して国際感覚を磨いた
・人の笑顔が好きだからボランティアで社会貢献した
・好奇心からゼミでいっぱい勉強した
・・・・etc


SO WHAT?(だから、何?)です。


むしろ聞きたいのは、その中で、あなたが何か壁にぶつかり思い悩んだり、一喜一憂する中で見えた世界、孤独に描いてみた未来の絵、それはどういうものなんでしょうか?

こっちです。


世界の最高峰と呼ばれる場では、ある程度の実績をベースにしつつも、地に足のついた率直な自分を伝えることが要求されている。


そのはるか手前の段階にいる皆さんが、実績も無いのに、浮き足立った「すごいでしょ!」合戦をしているとしたら、すごく滑稽じゃありませんか(その一部の責任は、インチキ就職屋さんらにあるんでしょうが)。


就職活動本番を前にパニックになりがちかもしれませんが、地に足をつけつつ目線を高くもって、そして襟を正しませんか?