筆記をなめてはいけません。② | 面白いほど就職活動がわかるBlog -an easy guide to job hunting-

筆記をなめてはいけません。②

何で企業が筆記試験をやるかと言うと、一定レベルの基礎力を持っているかどうか計るという目的以上に、「採用コスト削減のため」というのが上げられると思います。

理想は、「全員の応募者に会って、じっくりと面接をして、お互いの相性を確かめて、そして入社してもらう」という流れでしょうが、当然、こんな状況はありません。


面接というのはえてして非常に手間とお金がかかるものです。

例で考えてみましょう。

①応募者は10000人。内定は100人とする。
②面接は、内定まで合計3回。1次面接のみ4人の集団面接とする。
③2次に進めるのは2000人、3次に進めるのは400人とする(5倍)
④1回の面接は20分とする。

という条件で考えると、企業がやらなくてはならない面接の合計時間数は、

1次面接:10000人÷4人×1/3時間=約833時間
2次面接:2000人×1/3時間=約667時間
3次面接:400人×1/3時間=約133時間

合計面接時間:1633時間

になります。これを4週間の営業時間内(朝9:00~18:00、月~金⇒合計180時間)でやろうとすると、1633時間÷180時間で同時に約9の面接が行われている必要があります。

何だ、「たった面接用に9ブース作るだけじゃないか!」と思いますか?

しかし、9ブースを月~金の朝から夜まで3週間にわたって維持するのは、すごく大変です。

まず、場所はどうしましょうか? 3週間限定で9ブースの広さを借りなくてはいけません。加えて、控え室も必要ですね。この会場を借りるのに、当然、お金がかかります。


さらに面接官を手配しなくてはいけません。おそらく、ここのコストが一番、大変です。面接官というのは、基本的には前線で活躍している人々です。特に2次、3次と上がれば上がるほど偉い人になってきます。給料も高いし、他にも仕事のある多忙な人です。この人達の時間を採用に振り向けるというのは、それなりの高コストなんです。

これも例で、例えば年収1000万円の人が、先ほどの営業時間で働いて残業をまったくしないとすると、1年間の労働時間の合計は約2300時間ですから、時給約4300円になります(蛇足ながら、実は、年収1000万円でも、時給だけ見ると東大生の割の良い家庭教師バイトとあまり変わらないのです・・・)。

1ブースの面接官を2人とした場合、面接1時間の人件費は8600円になります。9ブースでやると、1時間に77400円もかかります。

しかも、これにはもし面接官が採用をやらずに営業に行っていた場合に稼げたであろう機会損失は入っていません。


最後に手間があります。上にも書いた通り、面接官は面接だけをやっているわけでなく、他に本業があります。はっきり言えば、クソ忙しいのに自分の仕事をストップさせて面接なんてやりたくないのが本音です。これを調整する人事部は本当に大変です(人事部採用担当で学生に偉そうに吼えている人って多いですが、実は、採用の権限なんてまったくなくて、単に採用のコーディネーションをやっていることが大半なんですよ。雑誌とかで”人事が教える採用のポイント”とか見ると「単に採用の調整係だった奴が、何を吼えているんだ」と突っ込みたくなる気分です)。



ガタガタと書きましたが、まとめるなら面接をたくさんやるのは企業にとって大変なんです。


そこで、楽する方法があります。1発の筆記試験で人数を絞ることです。
もし10000人の応募者を筆記で3000人に絞って、そこから同じような競争率(最終以外は5倍)で面接を開始すれば、面接時間はたったの490時間、何と3分の1ですみます。


面接に比べれば、筆記試験は楽です。1回に500人集めるとして、1日に3回やれば1500人で、10000人が受けに来ても約6.5日で終わります。筆記試験は、それを専門にやっている業者もあるので、面接官のコストも調整する費用もかからず、面接よりはるかに安上がりです。


ここで、「そんな筆記で落ちた中に将来、すごいことをやるような大きなダイヤモンドの原石がいたらどうするんだよ?!」という疑問が湧いてくるかもしれませんが、企業はそんな大きなダイヤモンドを探していません。


まず、働いてもいないポテンシャル採用である新卒採用で大きなダイヤモンドの原石を見抜けるとは思えないし(だったら、既に原石じゃなくて大きなダイヤモンドそのものを中途で採用すれば確実)、仮にもし見抜けるとしてもそれにかかるコストはすさまじく莫大です(全員に会って、じっくり何度も時間をかけて選考するわけですから)。加えて、仕事というのはえてして、大きなダイヤモンド一つよりも、中ぐらいのダイヤモンドが5つあった方が総力として結果に結びつくものなので、がんばって大きなダイヤの原石を探そうというインセンティブは低いものです。わかりやすく言えば、天才1人取るなら、秀才5人を取りたいイメージ。もっと言えば秀才5人をしごけば、1人は天才に生まれ変わるってことを、企業は過去の経験から知っているのです。


最後に、極論すれば、大きなダイヤモンドの原石ならば、たかが筆記ごときで落ちないだろって感じです。


あせってきた方、良かったですね。今なら間に合います。

具体的な対策方法は、また次回に。